Greetings from Chairman
寺澤 達也
日本エネルギー経済研究所は設立60周年を迎えることができましたが、これもひとえに賛助会員の皆様、関係省庁・機関の皆様など多くの方々のご支援の賜物であり、心より感謝いたします。 当研究所の60年間の歩みはまさにエネルギーの歴史そのものです。設立当初は石油関連の調査研究が主であったのが、1973年の第一次石油危機を契機にわが国がエネルギー多様化を強力に推進することと軌を一にして、当研究所はLNG、石炭、原子力へと範囲を大きく拡大し、省エネルギーにも重点的に取組みました。その後、再生可能エネルギー等の新エネルギー、そして近年では水素、CCS、エネルギー市場改革、さらには重要鉱物にまで調査研究対象を拡大し、エネルギーのあらゆる側面をカバーするに至っています。 1997年に採択された京都議定書を契機に、当研究所では地球環境問題への取組を強化してきています。国境を越えたカーボンクレジット取引の国際交渉や排出量取引市場の設計の支援、ライフサイクルベースでのカーボンフットプリントの分析など、当研究所では地球環境問題の調査研究に重点的に取組み、今では当研究所の第二の柱となっています。 第三の柱が地政学の分野です。2005年に中東経済研究所と当研究所は統合しました。中東経済研究所は第一次石油危機時の反省から1974年に設立されましたが、エネルギーと中東問題とのシナジーが高いことから統合に至ったものです。その後、中東に加え、米国、欧州、ロシア、中国、インド、ASEANなどの分析を進め、地政学に関する調査研究は当研究所の大きな柱となっています。 このように当研究所はエネルギー、地球環境、地政学という三つの柱を持つに至っていますが、こうした幅広いスコープに加え、定量分析専門の部門を持ったシンクタンクは世界でもほとんどないのが実情です。2月28日には米国・イスラエルがイラン攻撃に踏み切りましたが、ホルムズ海峡の閉鎖や湾岸エネルギー関連施設への攻撃のため、世界のエネルギー供給にはかつてない大きな支障が生じています。この危機を正確に分析し、今後の見通しを提示していくことは今まさに必要となっていることです。また、今回表面化した脆弱性を踏まえ、エネルギー安全保障の強化が急務となっています。エネルギーと地政学の両軸を持つ当研究所としてその役割を果たすべき時と責任を痛感しています。 他方、気候変動は毎年進行しています。そうした中で地球温暖化問題に関する野心と現実とのギャップが明白になりつつあります。こうしたギャップを受け止め、これをどのように縮めて行けるのか、意欲的かつ現実的な政策が求められていると思います。エネルギーと地球環境の二つの軸を持つ当研究所として最大限貢献して行きたいと考えています。 ますます難しさが増し、かつ変化が激しい、エネルギー・地球環境・地政学の諸課題に対し、当研究所として少しでも寄与できるよう全力を尽くす所存です。引き続き関係者の皆様のご支援を頂ければ幸いです。
日本エネルギー経済研究所 理事長 寺澤達也 2026年6月
寺澤理事長 経歴